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と思うわけであります。
ですからアフガニスタンという国は、そういうちがった文化に属する各種の文物が一つの遺跡からたくさん出てきております。私は大学におりました頃にアフガニスタンからガンダーラにかけての遺跡の調査をしておりましたので、幸いにその辺のスライド持っております。
現在はご承知のようにアフガニスタンは、国の内乱のために、なかなか外国の人が入れないという状況にあります。私は大変それを心配しているわけでありまして、2年前にもユネスコからご依頼があって、アフガンのカーブルに行こうと思ったのですが、私たちが実際に発掘いたしました関連の資料が、カーブルのミュージアムに置いたままになっているのです。1978年に行きましたが、この時に調査した道具類から発掘した資料などが全部置いてあって、まだその報告書もできておらない次第です。私としては何とかそれが無事であってほしいという願いを持っているわけです。ところがなかなかカーブルには入れないということで、何とか早く平和になってくれないかなという期待を持っているわけであります。
今日お集まりの方は観光をやってらっしゃる方だと思うのですけれども、私は観光ということは他国の光輝くものを観るということでありますから、非常にすばらしいことであると思います。しかし観光事業の開発として、例えばホテルを建設するとか、あるいは交通機関を充実させるとか、そういうことだけにむしろ熱意を示される、それは当然のことでしょうけれども、観光資源である古代の遺跡というもの、やはりこれの保存とか復元とか活用とか、あるいはそれの研究というようなところまでも、むしろその観光事業に携わっている方々も積極的に参加していただくことをお願いしたいと思っておりました。多くの方の声が出てくれば、それが保存ということにもつながり、そういう貴重な文化遺産という観光資源が滅びずにすむし、あるいは実際にそれからいろいろな利益を得ることができるのではないかと思います。
それで今一番心配しておりますのがアフガニスタンであります。最近カーブルに入った方もおられまして、その方が写真を撮ってこられました。それでカーブル博物館の写真をいただきました。後でお見せしますが、それを見てみますと、もう博物館の天井は全部吹っ飛んでおりました。中は爆弾を受けたようにいろいろな物が散乱しておって、その中に私がかつて博物館で見たすばらしいベグラム出土の彫刻のカニシカ王の像などが、破壊された館の中に残っているのです。本当にこれは大変だなという気持ちを非常に強くいたしました。
今日はアフガニスタンのそういう博物館の中にどんなものがあったのかということ、それが現在どうなっているのか、そういうことは全く私にはわからないのですけれども、とにかくそれが安全であることを祈って、とにかく一刻も早くそういうものが、また我々の観光資源として、皆がそれによっていろいろな知識を得られるような時代になったら非常に幸いだと思うわけであります。アフガニスタンにはいろいろな遺跡なり遺物があるのですけれども、その中で代表的なものを後スライドでご紹介しようと思います。
一番最初にご紹介いたしますのはアイ・ハヌムという遺跡でございます。このアイ・ハヌムというのは、先ほど申し上げましたバクトリアの時代のギリシアの植民地だと言われている遺跡であります。これはオクサス川の流域で、そこに支流のコクチャ川という川が南のほうから流れ込んでいる、そのちょうど合流の三角州のところにございます。フランスの調査隊がアイ・ハヌムの発掘をいたしました。そして、そこから本当にギリシアの都市を写したような都市があり、アクロポリスがあり、ギムナジウムがあり、それからシアターがあり、そしてモザイクがあったり、それからすばらしいギリシアの彫刻やブロンズやいろいろなものがそこから出てきました。
私が今でも非常に印象に残っておりますのは、ギリシア語の碑文がそこから出てまいりましたことです。その碑文はアイ・ハヌムを建設しましたキネアスという将軍を記念した霊廟の

 

 

 

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